私の出会ったart&designの本

2010年3月に開催された、第664回デザインギャラリー1953企画展のアーカイブ。
コミッティーメンバーが選んだ「影響を受けた3冊」に、テキストを添えてご紹介します。
多くの人たちの本と親しむきっかけとなれば幸いです。

佐藤卓ポートレート
佐藤卓|グラフィックデザイナー

1979年東京芸術大学デザイン科卒業、1981年同大学院修了、株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」「エスビー食品 SPICE&HERB」などの商品デザイン及びブランディング、「クリンスイ」のグランドデザイン、金沢21世紀美術館や国立科学博物館などのシンボルマークを手がけるほか、NHK教育テレビ「にほんごであそぼ」の企画メンバー及びアートディレクターとして活動。21_21 DESIGN SIGHTのディレクターも務める。また、大量生産品をデザインの視点から探求した「デザインの解剖」プロジェクトが話題を呼ぶ。著書に「クジラは潮を吹いていた。」などがある。

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編集=松岡正剛 他  出版社=工作舎 初版年度=1971年

1971年、工作舎より創刊された「遊」。
初めて書店で手に取ったのは、創刊されてから数年後の美大生の時だったと思う。松岡正剛さんが編集に関わり、杉浦康平さんのデザインであることは、その時まだ知らなかった。最初は何しろ見た事がないページネーションとデザインに大きなショックを受けた。学生の時は、とても毎号払えるお金がなかったので、立ち読みが多かったと思う。店頭ではその知的な密度が、周囲の雑誌を圧倒していた。そして今回この展覧会の企画を機に、古本屋で探して、幸いにも16冊をなんとか手に入れた。当時の内容は、今見ても読んでも新鮮である。

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カオスの自然学

著者=テオドール・シュベンク 出版社=工作舎 初版年度=1986年

テオドール・シュベンクの「カオスの自然学」。
水に興味を持ち始めたころに読んだ本である。世の中には水とかかわりのないものは何ひとつない。この本を読むと、生命が水に生かされていることに気付かされる。そして、ありとあらゆるところに水の形態が存在することを知って、世の中の見方が変わった。その後、東京ミッドタウンの中にできた21_21 DESIGN SIGHTで水をテーマにした展覧会「water」を文化人類学者・竹村真一氏と共に2007年開催することへ繋がる。活版の味を活かした祖父江慎さんのブックデザインも玄人好みである。

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陰翳礼賛

著者=谷崎潤一郎 出版社=中央公論新社 初版年度=1975年

谷崎潤一郎の「陰翳礼賛」。
この本は、言わずもがな日本のデザイナーならば必読書である。たしか30代後半くらいの時に人に薦められて読んだと記憶している。西欧人とはまったく異なる日本人の感性が、どのようなところで育まれてきたのか、霧が晴れるように分かる本である。あるプロダクトデザインの仕事で、参加メンバー全員の感覚を共有するために「この本をまず全員、読みましょう!」と提案したことがあるほど、日本人全員でこの感覚のコアを共有したい。日本人であることに誇りが持てる必読の本である。

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