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伝統の未来

刃物 刃物

和包丁や日本刀に代表されるように、日本の打刃物の質の高さは世界的に知られている。その一方で、原材料となる良質の鉄鉱石は奈良時代には既に枯渇しており、現在ではほぼ全量を海外からの輸入に頼っている。そして歴史的には、鉄材料の輸入だけには頼らず、決して品質が高いとはいえない砂鉄を材料に製鉄を行い、鍛冶(「金打ち」が変化した語)と研磨の高度な技術によって、優れた刃物を作りだしてきた。戦いの武器、あるいは威信財となる刀剣、ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」を生み出す包丁、さらに木造建築を成立させる鉋や鋸などの大工道具に和釘、農作業に用いる鍬や鎌にいたるまで、日本文化を成り立たせているさまざまな道具の根本に、鍛冶と打刃物の技術がある。

日本各地に地場産業としての鍛冶が根づいていくのは、城下町や大都市の形成に伴い、市民生活に必要な鉄の需要が高まる江戸時代以降のこと。こうして確立された鍛冶の仕事の中で、現在、伝統的工芸品に指定されているのが、越前、堺、信州、播州三木、越後与板、土佐、そして越後三条という、7カ所の打刃物だ。

越後三条では、江戸時代初期に農家の副業として、代官所が和釘の製造法の指導を行ったことを契機に鍛冶の仕事が始まった。次いで新田開発を推進するための農機具も作られるようになり、間もなく鍛冶専業の職人たちが現れて、大工道具、包丁、和釘など、製造する道具の種類や技術が広がっていく。それらの道具は金物専門の商人の活躍で、近隣地域だけでなく、より広い商圏で取引されるようになっていった。

このようなルーツを持つ越後三条の打刃物は特に自由鍛造、すなわち型で成型するのではなく、叩く台とハンマーで自由に形を決めることができる技術に優れ、大型鍛造品や多品種少量生産に適している。「刃物」のパートでは、日本の山野河海の間に広がる多様な生活上の要請から生まれた、20種類以上の特殊な包丁によって、刃物のデザインの多様さと可能性とを紹介する。

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包丁のカタチ|
監修:柴田文江

刃物は、使いみちや、鍛冶の工夫、使う人の好みに寄り添うことで、あらゆる形状を得てきました。和釘づくりから発生した燕三条の鍛冶産業は、全国の農村、漁村からの細かな注文に応え、その技術を磨いています。ここでは中でも暮らしに近い「包丁」に対象をしぼり、産地燕三条のものづくりから、日本の刃物のカタチを浮かび上がらせます。

様々な目的で使用される刃物

  • 蛸引包丁

  • うなぎ裂包丁

  • ネギ切包丁

  • キャベツ切包丁

  • 人参切り包丁

  • 菜切包丁

  • 網切包丁

  • 加工包丁

  • 鯖裂包丁

  • サイカチ出刃

  • 昆布削り包丁

  • 間切包丁

  • 蕎麦切包丁

  • カステラ切包丁

  • 鮭切包丁

  • 皮裁ち包丁

  • ハチミツ包丁

  • さる切り包丁

  • ニンニク包丁

  • 紙切り包丁

  • 箪笥仕上包丁

  • 和釘